【 注 意 】
・「生殺し」後の主人公、村育ちなので耳年増
・しかし微妙にあほのこ思考
タナッセが去る足音が耳に届かなくなった頃、私は腰を抜かすように座り込んだ。
知識はある。知っている。
数秒前までここにいた彼の行為は、むしろ更に発展した行為すらも私は知っている。何しろ私が居た場所はお上品な城ではなくて小さな辺境の村で、子供と言えども小さな大人扱いというか、未分化が居ようと居まいと品のない話も当たり前にされていたからだ。いやまあ子供を作るアレコレは下品なのかという話ではなく、……なんというか、凄かった。直裁でない言語化は語彙的に難しいが、曲芸じみた楽しみ方の話とか、あるいはそういう嗜好の人間の話とかも耳に入ったし、正直に言うなら目撃しかけて即方向転換、という経験もあった。昼間で屋外など想像の埒外だった。
待て、違う。発展行為まで行くと脱線だ、今されたのはそんな過激なものではない。そうそんな。そんな――そんなに衝撃だったんだろう、私には。
触れたのは一瞬。ほんの刹那。かたい冷たい肩や背の感触とはまるで異なる、柔らかくあたたかな接触。村で見聞きしたアレコレに比べれば、なんてことはないはずの触れ合いなのに、私はどうしようもなくしゃがみ込んだまま立ち上がれない。というか、何故彼はあんなことを突然したのか。普段あれだけ厭味に口が回っているのだから今回だって口で言えば良かったんだ。それを口づけしたりして、あぁ今私何回口って考えたんだ。いやもう口とか考えたらいけない、あの一瞬を幾度もいくども繰り返して、力がどんどん抜けていく。辛うじて地下湖の出口を見ていた上半身が、とうとう丸まった。
全く、全くもう。
そういうことだと、信じていいんだろうか。
口移しするシチダンカ
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理論や理屈はすっ飛ばし、
基礎もかっ飛ばし、応用編を知っている問題。